この新たな「人」への焦点は、ビームスに2010年代の明確な方向性を与えました。ソーシャルメディア時代に対応すべく、ビームスはPRチームのメンバーをブランドアンバサダーに起用し、後に彼女を最大規模のウィメンズレーベルのディレクターに任命しました。さらに、ビームスはその秘密兵器であるスタッフの編集力と鋭い洞察力を、ビームス インスティテュート オブ クリエーションを通じて他社にも展開しました。自動車メーカーのSUBARUとのコラボレーション後、同インスティテュートは著名な女性セレブリティのファッションブランドをプロデュースするだけでなく、書籍やパフォーマンスも展開しました。
2010年代 2010年代
成熟市場と多様化

2014年から2015年にかけて、ビームスは原宿店を改装し、メンズカジュアルウェアに重点を置きました。1階には、季節ごとの雑誌のような店舗として、定期的にポップアップショップが出店するようになりました。数ヶ月ごとに、スタッフはインテリアとマーチャンダイジングを完全に入れ替え、季節ごとのテーマを提供しました。これらのアイデアのいくつかは、他の場所での常設店舗へとつながりました。例えば、ニューヨークのピルグリム サーフ+サプライはポップアップショップに参加し、その後、ビームスと提携して渋谷に旗艦店をオープンしました。ピルグリム サーフ+サプライの2階は、レディースの旗艦カジュアルストアで、最近改装され、同社史上初めて、女性が女性のために作った店舗となりました。
2008年の経済危機後、メンズウェアは伝統的なスタイルとブランドへの注力をさらに強めるようになりました。この時期、ビームス プラスは、eコマースサイト「ミスター・ポーター」のマネージングディレクター、トビー・ベイトマン氏の目に留まりました。同ブランドはニューヨークのバーグドルフ・グッドマン百貨店でも販売を開始しました。ビームス プラスによって、同社は小売店としてだけでなく、衣料品ブランドとしても高い評価を得るようになりました。現在でも、ビームス プラスは同社の輸出戦略の柱の一つとなっています。


ビームスは、世界の優れた商品を日本に紹介するという理念からスタートしましたが、2016年には日本のモノ・コトを応援するプロジェクト「ビームス チーム ジャパン」を立ち上げました。全国各地の自治体と連携し、各地のガイドブックの制作や、地域の伝統工芸品を使った新しい商品の開発に取り組んできました。新宿店はビームス ジャパンとなり、伝統的なものからサブカルチャー的なものまで、日本の感性や職人技を活かした服やアイテムを揃えています。これらのメイドインジャパンのオリジナル商品は、現在ロンドンやパリにも輸出されています。同年、ビームスはミスターポーターと協力し、ロンドン メンズ ファッション ウィークで日本の新進気鋭のブランドを紹介する展示会を開催しました。
ビームスの根底にある姿勢は、創業以来変わることなく受け継がれています。それは、世界中から集めた良質な商品に光を当て、お客様に輝く笑顔を提供することです。その使命は、すでに日本全国、そして今や世界へと広がり、これからも成長を続けていくでしょう。
文:村上要/WWD JAPAN編集長 W.DAVID MARX / 『地位と文化』『アメトラ』著者
